近年、生成AIの進化は非常に速く、多くの企業が独自AIの開発・公開を進めています。その中で、楽天が発表した「Rakuten AI」が「中国製AIではないか」とSNSや技術コミュニティで話題になりました。
実際には、楽天が中国企業DeepSeekのオープンソースモデルをベースに開発していたことが判明し、一時的に大きな議論となりました。
しかし、このニュースを正しく理解するためには、「AIモデル」と「AIサービス」の違いや、オープンソースLLM(大規模言語モデル)の開発手法について知る必要があります。
本記事では、楽天AIを巡る議論の背景を整理するとともに、オープンソースAI時代における中国発AIの位置づけについて分かりやすく解説します。
楽天AIで何が話題になったのか
楽天は自社の生成AIとして「Rakuten AI」を公開しました。
発表当初は、自社独自のAIとして紹介されていましたが、その後、公開されたモデル設定ファイルなどから、中国企業DeepSeekが公開しているオープンソースLLMをベースとしていることが技術者によって確認されました。
その結果、
- 「楽天AIは中国製AIなのか?」
- 「なぜ最初から説明しなかったのか?」
- 「中国製AIは安全なのか?」
といった議論がインターネット上で広がりました。
一方で、AI業界では海外のオープンソースモデルをベースに独自開発を行うこと自体は珍しいことではありません。
議論になった最大の理由は、中国製モデルを採用したことよりも、その説明方法や透明性に対する受け止め方だったと言えるでしょう。
オープンソースLLMでは「ベースモデル」を利用するのが一般的
ゼロからAIを開発する企業は少数
近年の生成AIでは、すべてを一から開発する企業は限られています。
大規模言語モデルの学習には数千〜数万枚のGPU、大量のデータ、そして莫大な開発費が必要になります。
そのため、多くの企業は既存のオープンソースモデルを活用しています。
代表的なモデルには次のようなものがあります。
- MetaのLlamaシリーズ
- AlibabaのQwenシリーズ
- DeepSeekシリーズ
- Mistralシリーズ
- Google Gemmaシリーズ
これらは世界中の企業や研究機関で利用されています。
独自AIとは何を意味するのか
「独自AI」と聞くと、ゼロから開発されたAIをイメージする人も少なくありません。
しかし実際には、
- 日本語性能を改善
- 独自データで追加学習
- 専門知識を追加
- 安全性の調整
- 回答品質の改善
などを実施したモデルも、一般的に独自AIとして提供されています。
つまり、
「ベースモデル+独自チューニング」
という形は現在のAI業界では標準的な開発方法です。
中国製AIだから危険という見方は正しいのか
結論から言えば、一概には言えません。
ここで重要なのは、
AIモデル
と
AIサービス
を区別することです。
AIサービスを利用する場合
クラウド型AIサービスでは、ユーザーが入力した内容はサービス提供会社のサーバーへ送信されます。
そのため、
- データ保護
- 利用規約
- 保存期間
- 法令遵守
などを確認する必要があります。
オープンソースモデルを自社サーバーで利用する場合
一方で、DeepSeekなどのオープンソースモデルを自社サーバーで実行する場合、入力データが自動的に開発元へ送信されるわけではありません。
つまり、
- 社内サーバー
- オンプレミス環境
- ローカルPC
などで実行すれば、データ管理は利用者側が行えます。
これはOpenAiのgpt-oss-120b、MetaのLlamaやAlibabaのQwenなども同様です。
楽天AIで本当に議論されたポイント
技術者コミュニティでは、「中国企業のモデルだから」という理由だけではなく、次の点が注目されました。
透明性
公開当初は、DeepSeekベースであることが明確には説明されていませんでした。
その後、技術者が設定ファイルなどを解析し、ベースモデルが判明したことで、
「最初から説明していれば問題にならなかったのではないか」
という意見が多く見られました。
ライセンス表記
オープンソースソフトウェアにはライセンス条件があります。
適切なライセンス表記や著作権表示は、オープンソースコミュニティでは非常に重要視されています。
後に必要な修正が行われたことで、この点も議論の対象となりました。
中国発オープンソースAIは世界で急速に存在感を高めている
近年、中国企業は高性能なオープンソースLLMを数多く公開しています。
代表例として、
- DeepSeek
- Qwen
- MiniMax
- Kimi
- Zhipu AIーGLM
などがあります。
特にQwenシリーズやDeepSeekシリーズは、多言語性能やコーディング能力の高さから、多くの企業や開発者に採用されています。
現在では、中国製だから利用しないというよりも、
- 性能
- ライセンス
- 学習データ
- 運用方法
を総合的に評価する流れが主流になっています。
企業がAIを選ぶ際に確認すべきポイント
企業でAIを導入する際は、「どこの国のAIか」だけでは十分ではありません。
確認したい主なポイントは以下のとおりです。
データはどこへ送信されるのか
クラウドサービスなのか、自社サーバーで動作するのかを確認しましょう。
ライセンスは明確か
商用利用や再配布が可能か、利用条件を確認することが重要です。
継続的に更新されているか
セキュリティ修正や性能改善が継続されているモデルは、長期運用でも安心感があります。
用途に適した性能か
日本語対応、推論能力、コーディング性能など、自社の目的に合ったモデルを選ぶことが重要です。
まとめ
楽天AIを巡る議論は、「中国製AIだから危険」という単純な話ではありませんでした。
現在の生成AI業界では、オープンソースモデルをベースに独自チューニングを行うことは一般的な開発手法です。
重要なのは、どのモデルを採用したかだけではなく、その事実を適切に開示し、ライセンスを遵守し、利用者に対して透明性を確保することです。
また、AIの安全性を考える際には、「どこの国で開発されたか」だけで判断するのではなく、データがどこで処理されるのか、どのような運用方法を採用しているのかまで含めて評価することが求められます。
生成AIは今後も急速に進化し続けます。利用者も企業も、ニュースの表面的な情報だけで判断するのではなく、技術的な仕組みやオープンソース文化への理解を深めることが、AIを正しく活用する第一歩となるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 楽天AIは中国企業が運営しているのですか?
いいえ。楽天AIは楽天が提供するサービスです。話題となったのは、中国企業DeepSeekが公開したオープンソースモデルをベースとして採用していた点です。
Q2. 中国製オープンソースAIを使うと、自動的に中国へデータが送信されますか?
必ずしも送信されません。オープンソースモデルを自社サーバーやローカル環境で実行する場合、データは利用者が管理できます。一方、クラウドAPIを利用する場合は、サービス提供者のデータ取り扱い方針を確認することが重要です。今回楽天Aiの場合、データは楽天側が管理するので、自動的に中国へデータを送信することはないです。
Q3. 海外のAIモデルをベースに独自AIを開発することは一般的ですか?
はい。MetaのLlama、AlibabaのQwen、DeepSeek、Mistralなどのオープンソースモデルをベースに、独自データで学習や調整を行う手法は世界中で広く採用されています。
Q4. AIを導入する際に最も重要なポイントは何ですか?
モデルの国籍だけでなく、データの保存場所、ライセンス条件、セキュリティ対策、運用方法、サポート体制などを総合的に評価することが重要です。
